防弾技術

 防弾技術とは、飛来する銃弾によって人員が死亡することのないように防護することを目的とする技術です。
平和な日本ではあんまり関係ないのでは・・・・・と考えていらっしゃる人もあるかと思います。
 とんでもありません!
 不法に国内に持ち込まれた拳銃の数はまったく予測がつかないものだそうです。特に「トカレフ」という旧ソ連時代に設計された拳銃は、十万丁を超える数は間違いなく国内に存在するだろうということが言われています。ですから「トカレフ」がいつ目の前で使われるか予測がつかないのが現実です。となりますと、もっとも遭遇の可能性の高い警察官が着用している防弾ベストは「トカレフ」から発射された銃弾を阻止するべきものであろうことは誰でも考えるところです。
 ところが警察官に支給されている防弾ベストは「トカレフ」から発射された銃弾を阻止できません。聞いた話で恐縮ですが、警察官に支給されている防弾ベストは、暴漢に襲われて拳銃が奪われ、もみ合っているうちにその拳銃で撃たれた場合にその銃弾を止めることを目的としているのだそうです。威力の小さい警察官の拳銃の銃弾を止めることはできても、本当の脅威である「トカレフ」に対しての考察はなされていないようなのです。まぁ建前では、一般に日本国内に拳銃は存在しないことになっているわけですから説明はつきます。
 この具にもつかない官僚的発想が、現場の警察官の生命の安全を省みない結果になってしまっています。例えば2007年愛知県では、被弾して倒れた警察官を救出に行けない事案がありました。自分たちの装備では射線上に出られないので目の前に倒れている同僚を救えないという現実。さらには防弾性能の低いものしか与えられていない隊員を誤った運用に基づき配置するという知識・常識を欠いた作戦は、前途有望な一人の貴重な生命を無駄にしてしまいました。
 状況は海上保安庁でも防衛省でも同じようなもののようです。不審船対処が任務の一つになる海上保安庁や海上自衛隊では、「トカレフ」だけではなく「AK-47カラシニコフ」というライフル銃に対抗しなければなりません。すでに北朝鮮の不審船事案では巡視船が「AK-47」で銃撃されたという事実があるのですから。
 「AK-47」はこの半世紀で一億丁を超える数量が生産されたといわれており、海外の紛争地帯ではもっともポピュラーな脅威武器ですので、中東などの現場へ派遣される自衛官等は、本来「AK-47」の銃弾を阻止する防弾装備を与えられていなければなりません。ところが彼らがイラクの現場へ持っていかされた装備の大半は分厚い鉄板でした。それはそれでいいように思えますが、残念ながら厚さ6mm程度の鋼鉄の板では「AK-47」の銃弾は止められません。
 本来専門家であるべき防衛省にも、銃弾の脅威に対する充分な認識が育っていなかったようです。

 私はもと自衛官ではありますが、防弾に関する専門家ではありません。ただ幸いにも、米軍正式採用のスペクトラという素材のビジネスに関与できるチャンスをいただきました。その経緯で学習できたことが少しでも参考になればと思いますので一部ご紹介いたします・

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