防弾装備の本質的な意味

防弾装備の本質的な意味を確認しておきます。
防弾装備の役目は、銃弾から人員・器材を守ることです。
ただしその防御能力とは、最初の一撃か、威力の小さい銃弾の最初の一連射に対抗するものです。
「 撃たれた! 」 でもその銃弾で兵士が死亡することなく物陰に隠れることができる、あるいは戦友が物陰に引っ張り込んでくれるであろう貴重な数秒間の猶予を兵士に提供することが防弾装備の本来の目的なのです。
極めて重要なことですが、防弾装備を持っていると無敵になれるなんて勘違いしてはいけません。
いずれにせよ銃撃戦になったら、防弾ベストの装着の有無に関係なく、安全なもの影に隠れなければならないのです。

さて海上自衛隊の場合、2009年のソマリア沖海賊対策での海上警備行動の活動のステージは海の上ということになります。
例えば陸上に居るときは、重たい防弾ベストを着ていてもその場に伏せることができます。
残念ながら海の上ですと何らかの理由で落水したらそのまま水の中です。
そのとき、重たくてかさばる防弾ベストを装着していたら、いくら泳ぎが達者な海上自衛官でも、水面に顔を出せません。
重たい装備の装着の有無に関わらず、作業時は救命胴衣も着用しますので、大丈夫なのですが。
でも様々な装備を抱え、重たい防弾ベストを着込み、さらにそれを浮かすだけの巨大な救命胴衣を着込み、そして例えばソマリア沖のような40℃を超える気温のなか機敏に動き回ることが本当に可能なのでしょうか?

銃弾の威力のことだけを見るのではなく、防弾ベストの着心地も大事です。銃弾から守ってくれてもかわりに熱中症の心配をしなくてはならないのであれば、まったく意味がありません。おかしな話ですが、重たすぎる防弾ベストを装着しないで機敏に動き回れたほうが、銃弾の射線に曝される時間を短くできるということでは、危険回避に寄与できる場合があるかもしれません。 ( 統計上は装着していたほうが残存性は高いそうです )
銃弾も熱中症のどちらも簡単に人を殺してしまう要因であることは間違いありません。

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