護衛艦の防弾性能

護衛艦が実働任務のために海外へ派遣されることが増えてきました。
1990年代前半の中東への掃海艇派遣、昨今はインド洋における洋上補給任務。そして2009年春にソマリア海域の船団護衛。
ちなみにソマリアへ派遣された部隊の隊指令の五島1佐は、防衛大の同期(1981年卒業)です。
実質的な法体系の整備も間に合わないまま、予定通りの船団護衛を開始し、現地時間の4月3日にはシンガポール船籍のタンカーの要請を受けて不審船対処を行うにいたっています。脅威の性質は別として、実質上現場は危険海域だと思います。

派遣部隊の彼らは、直前に調達された間に合わせの 「 防弾盾 」 を積み込んで出港しました。
おかしな話ですが、市ヶ谷の内勤のスタッフには
「 護衛艦がいけば海賊なんて近付いてきませんよ。だから実効上の防弾装備はほとんどいらないはずです。 」
という意見がかなり大きく聞こえていました。なるほど護衛艦の存在そのものが抑止力として充分機能するならば、本当にすばらしいことです。ところが2009年3月29日、ドイツ海軍の補給艦が海賊から銃撃を受けてしまいました。
軍用艦船に手を出す海賊はいないだろうという希望的観測はあえなく潰えたようです。

ドイツ海軍の補給艦が銃撃された途端に、「 スペクトラ レベルV++ 」 の需要が世界的に急激に高まりました。有効な防弾素材ですのでアメリカ以外の軍隊での調達要求が一気に噴出したからです。ただし、生産状況や使用者、使用目的が厳格に管理される注文生産の戦略物資ですから、誰でも購入できる/いつでも購入できるという市販品ではありませんし在庫されている量産品でもありません。発注してから手元に来るまで、どんなに急いでもらっても6週間以上かかる製品であり、工程管理・品質管理上、生産速度をあげることは不可能のものです。事情が分かっている国は必要数確保に動きだしましたので当分の間は6週間程度というようなタイムリーな入手は困難になるでしょう。

さて、護衛艦の艦長職域の現役自衛官と話をする機会のときに、護衛艦の船体の鋼板なら防弾性能は大丈夫だろうという神話が出てきました。なるほど、自分の指揮する艦船に向かって小銃を発射したことのある自衛官はいないでしょう。
確かに、自衛隊が持っている64式小銃や89式小銃では護衛艦の船体に穴をあけることは不可能かも知れません。
でも、64式小銃や89式小銃で攻めてくるテロリストや海賊は基本的には存在しません。
そこで、1億丁も生産され世界中で最もありふれた銃である 「 AK-47 」 で 「 MSC弾(軟鉄弾) 」 を特殊鋼板に対して発射した場合、どの程度の威力があるのかを資料にしてみました。

■ 特殊鋼板の耐弾試験 ( NIJ 0108.01準拠 ) PDF 3ページ 577kb


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