夢の繊維・スペクトラ 

以下の文章は、注1)「 銃器使用マニュアル 」 (カヅキ・オオツカ著 / データハウス社発行) からそのまま引用させていただきます。


「夢の繊維・スペクトラ」
 大手化学メーカー、注2)アライドシグナル社の開発した”スペクトラ”はケブラー以上のスーパー繊維で、とにかく軽い 注3)( 水に浮く ) −−−従来品より25%も軽量かつフレキシブルなので着用感が快適の一言に尽きるのだ。しかもケブラーと違って数発撃ち込まれても大丈夫という強靭さだ。ケブラーの場合、ブレットがヒットすると、ダメージはヒットした部分だけでなく繊維全体に広がる。であるから5,6発がヒットすれば、それだけボディーアーマーとしての効果は低下するのだ。 ( 実際、現場で3,4発以上撃たれるということはないだろうが )。
 またスペクトラには防刃効果もあり、体温も逃がしやすいので蒸れたりしない。さらには擦り切れ、防カビ、耐ケミカル性にも優れている。メーカーいわく、「うちのスペクトラはスチールの10倍は大丈夫ですよ。」と。
 ケブラーとの比較で唯一劣っているのは火に弱いという点だ。しかし長所と相殺してもボディアーマーとしての完成度は問うまでもないだろう。警官は消防士じゃないのだから!
 スペクトラはボディアーマー以外に、装甲車、防弾ヘルメット、レーダーアンテナの保護ドーム、注4)防刃グローブなどにも採用されている。さらに転用範囲は自転車のフレーム、テニスラケット、ホッケースティック、スキー、カヌー、帆布、ロープなどにも広がっている。
 事実、NIJの基準に照らし合わせても、スペクトラはケブラーよりも優れている。たとえ数発撃ち込まれても繊維の構造上インパクトを緩和し、それを散らすようになっているのでブラントトラウマは最小限ですむ。
 スペクトラシールドを使った耐ライフル用ボディーアーマーならば、従来品が必要としたセラミックやスチールなどの補強シールドは不要となり重さは半減する。言うまでもなく、性能面で優れているスペクトラは価格面でもケブラーを凌いでいる。つまらぬところで出し惜しみして、命を落としたくはないだろう。とにかく、どんなに高価なボディーアーマーでも着用しなければ防弾効果はゼロだ。
 最後に、ブランド、スタイル、機能に関わらず、ボディーアーマーは着ないよりは着たほうがいいに決まっている。それと心していただきたいのは、100%ブレットプルーフのボディーアーマーは存在しないということ。日々の着用習慣こそが重症を負う確率を下げてくれるのだ。
 たしかに防弾効果を高めようと等級を上げれば、その分重量は増し快適さは犠牲になる。警官はボディーアーマーの着用意義はもちろんその限界についても理解されたい。
 日常勤務であろうと、絶体絶命のシチュエーションであろうと、ボディーアーマーは着用することに意義があるのだ。

注1) この文献を根拠図書とすることの是非はあります。ただし一般に入手できる資料でここまでラジカルにデーターを開示しているものもないようですので、チャンスがあったら一読してみるといいと思います。
注2) アライドシグナル(AlliedSignal)社とは、アメリカに存在した航空宇宙、自動車用部品、工業材料の大手メーカーです。1999年にハネウェルを150億ドルで買収する形で合併し、ネームバリューの大きかった 「 ハネウェル 」 という社名を踏襲する手段をとりました。現在、スペクトラに関しては 「 ハネウェル 」 で認識されています。
注3) スペクトラの比重は、0.98です。防弾素材として水に浮く比重のものは他にはありません。
注4) 防刃グローブは弊社D.S.T.でも取り扱っています。取扱商品をご覧ください。

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